ワークショップの風景

〈場〉の構成

20年近く前ということになると、おそろしく昔のようにも感じられるが、「ワークショップの風景」は、あの頃と、さほど変わっていないのかもしれない。机やイスの配列、ホワイトボード、ペットボトルやお菓子、コミュニケーションのありようなど、ぼくたちは、いまでも同じような意識を持ちながら、それぞれの現場に向き合っている。(もちろん、PCをはじめとする機材や、ぼくたちの容姿は大きく変わっている。)

…ワークショップでは、“現場”でのリアリティを伴った経験を省察することで、初めてその後の学習が実りあるものとなると考えられる。従って、ここでは、「ふりかえり」の重要性がしっかりと理解されると共に、「ものづくり」のフェーズ自体の重要性も理解される仕組みづくりが必要となる。

このような点を考慮し、本研究では、「ものづくり」、「ふりかえり」というフェーズに加え、「ものづくり」での成果を「発表」するフェーズを設定し、それらを以下に挙げたような意味を込めて「アトリエ・ギャラリー・カフェ」というメタファーで表現した。(加藤 1995、上田 1998)

 

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アトリエ: アトリエとはものを創り出す工房である。ものづくりには、自由気ままに、そして自分の信じるがままに集中して作品を創作する〈場〉が必要である。

ギャラリー: アトリエで創られた作品は、世に問い、評価を受けてこそ意味がある。ギャラリーは、アトリエでの活動の成果(作品)を発表する〈場〉である。

カフェ: ものづくりには自らの活動を振り返ることが重要である。カフェは、「制作」という自分たちの「学び」についての「ふりかえり」の〈場〉である。

 

ここで重要なことは3つの場が相互に関連しあいながら、全体として1つの学習の〈場〉を構成するという点である。それは、学習に対する視点を、「ものづくり」・「発表」・「ふりかえり」という個々の場での結果(プロダクト)から、3つの場における行為と思考の相互浸透の過程というプロセスに移行することである。

加藤・長岡(2001, p. 10-11)

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 【写真:ON プロジェクト(1998)より】

  1. 加藤文俊・長岡健(2001)「ワークショップ型学習環境のデザインに関する研究」科学技術融合振興財団(FOST)・平成10年度(1999年4月〜2001年3月)助成研究 報告書
  2. 加藤文俊(1995)「tau+:共同利用室について(私案)」未発表マニュスクリプト
  3. 上田信行(1998)「21世紀の学習環境デザイン」、平成10年度情報教育問題フォーラム資料、私立大学情報教育協会、pp67-68